1 フィンマックに相談したが冷たくあしらわれたとか、全銀協で殆どまともに話を聞いてもらえなかったといった不満の声を相談者の方から聞くことがよくあります。しかし、これは、フィンマックや全銀協に過剰な期待を抱いていることからくる不満であることが多いというのが実感です。と言いますのは、フィンマックや全銀協の職員の方々は、中立公平な立場で相談に乗ってくれるだけで、決して相談者の味方になってくれるわけではありません。しかも、全銀協やフィンマックが元々銀行や証券会社の上部組織を母体にした組織であるとか、職員の方の多くが金融機関出身の方々であることから来る限界は自ずとあります。また、金融ADR制度自体が、金額が少額で事案が平易な事件(このような事件を訴訟で解決を図るのは無駄が多い)の解決を念頭に置いて設立された経緯や、現在でも高額で事案が複雑な案件は訴訟で解決を図るべきであるという考え方を取っている以上、訴訟案件に近い案件を持ち込んで解決を図るのは相応の努力が必要です。

2 さらに、相談を受けた弁護士として非常に残念なのが、フィンマックや全銀協にあっせん申し立てを行い、不調になった、あるいは来週に期日が設定されているといった状況で相談に来られる方が非常に多いという点です。確かに、フィンマックや全銀協は、当事者の方が代理人を頼まなくてもあっせん申し立てができる体制を整えていますが、あっせん委員の方は全て弁護士ですし、証拠や経験則を踏まえて心証を固めた上であっせん案を提示する、しないといった手続きの流れからも、法的な観点での事案の見方や証拠の内容等は有利な解決を目指すのに必要不可欠です。

また、これもよくある悪いパターンなのですが、素人の方があっせん申立書等を作成して提出すると、後で不調になって民事訴訟に移行した場合、不利な形で足枷になってしまうことがよくあります。専門弁護士であれば、有利・不利を考えて戦術的に書面を作成することが可能ですが、素人の方ではそのような判断ができないため、後に訴訟で不利になってしまうことになるのです。

実際、当事務所でも、相談に来られたタイミングが遅すぎて、専門の弁護士であれば主張しないようなことまで記載してしまっていて、もし訴訟になるとその点が弱点になってしまうであろうということがありました。

3 あっせん手続きと民事訴訟で一番大きく違うのは、前者は当事者双方が譲歩して合意に達しないと解決できないという点です。あっせん委員も全て事件があっせんで解決できるとは思っておらず、むしろ不調になって民事訴訟に進むケースの方が多いと思われます。そうすると、あっせん申し立ての場合、常に不調リスク(不調となって解決できないリスク)を伴うので、できるだけそれを回避するように事前の依頼者との擦り合わせや相手方との交渉等が重要になってきます

また、フィンマックや全銀協の職員の方々ともコミュニケーションを図り、申し立ての趣旨等を伝える必要があります。さらに、実際のあっせんの場では、あっせん委員に特別調停案を出してもらうように働きかける必要もあります。また、あっせんが不調になって民事訴訟になることも想定した形で準備する必要があります。例えば、相手の手持ち証拠やどのような反論がなされるのかをあっせんの場で確認するといった方法です。ここで注意を要するのは、あっせんでは「あっせん委員限り」という形で申立人の目に触れない形で証拠が提出されているケースがよくあるという点です。この点もあっせんの場でよく確認し、必要な範囲で申立人にも開示してもらう必要があります。

4 当事務所は、フィンマック及び全銀協におけるあっせん申し立ての件数は100件を超えており、全国でも豊富な経験を有している事務所です。そのような豊富な経験に基づいてアドバイスできる数少ない事務所です。

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