我が国における約1600兆円もの巨額金融資産の多くが高齢者の下に眠っているのは周知の事実であり、これを巡って金融機関等が激しい争奪戦を繰り広げているのが現状です。

高齢者の投資判断が経済的合理性に基づかないのは経験則上明らかであり、経済学自体が経済的合理性を前提とした理論が崩れてきて、行動経済学や神経経済学が主流化してきていることからも明らかなように、金融商品取引の世界でも心理学やゲーム理論のような要素が導入されてきています。

これまで取り扱ったケースで言えるのは、高齢者の投資判断において大きな要素を占めているのが「感情」です。そこで、金融機関も高齢者への投資勧誘において「感情」に訴えるような手法を導入しています。例えば、実際にあった例ですが、入社したての若くて好青年の印象の営業マンが足繁く通い、話を聞いてくれた御礼を毛筆で巻物にしたためて送るといった方法です。また、セールストークも「この投資信託を購入すれば毎月分配金が得られて、お孫さんにお小遣いを渡せますよ。」とか「この債券を購入すれば、半年毎に利息が得られて、お孫さん達とディズニーランドに行けますよ。」といった類が使われます。確かに、高齢者になると楽しみも限られてきて、お孫さんと仲良くしたい、お孫さん達家族と一緒にどこかへ出かけたいといった気持ちが強くなるでしょう。そのような心理状態を巧みについたセールストークが使われるのです。その結果、投資判断における経済的合理性が影を潜め、相手が頑張っているからとか、良い人そうだからとか、孫達と楽しく暮らしたいからといった要素で金融商品を購入してしまうのです。そして、高齢者が購入した投資信託が実はリスクが高かったり、購入した債券が仕組債であったりするのです。分配型の投資信託も分配金が元本を取り崩しているだけといった商品も存在します。そのような商品の購入に購入金額の3%(例えば購入金額が5000万円であれば手数料が150万円)の手数料を払う価値があるとはとても思えません。

関連ページはこちら