被害の実態

少子高齢化が極端に進んだ日本において,1500兆円を超える金融資産の殆どが高齢者の下に眠っていることは周知の事実です。このような高齢者の金融資産は,詐欺業者や悪徳業者に限らず,誰でも知っているような名前の通った証券会社や銀行も狙っています。日本の証券会社や銀行は,株式の売買による委託手数料や融資による金利収入で体制を維持できるような状況ではなくなり,金融リテラシーの低い高齢者に対して,仕組債,外国株式,投資信託といった手っ取り早く手数料を稼げる商品をロールで次々と成約させて高額の手数料収入を得ています。

日本の高齢者は,自分の息子や娘のような若い営業担当者が足繁く通い,長時間にわたって話し相手になるだけで気を許してしまい,訳もわからずに営業担当者が勧める商品を次々と購入してしまっています。営業担当者は,電話での会話は全て録音されていることを知っていますので,大事な話は面談でしようとします。そのため,「ちょっと近くまで来たのでお寄りしても良いですか」とか「来週近くまで行く用事があるのでお寄りしても良いですか」等となんとか高齢者とのアポイントを取り付け,面談した際に書類にサインさせて成約させようとしています。

実際,当事務所で相談を受けた事例でも,ブラジルレアルやトルコリラといった新興国通貨に連動した仕組債を1000万円単位で次々と購入させられているケース,中国株や米国株のような外国株式の回転売買をさせられているケースなどがありました。

 

対応策

取引内容を調査する

高齢者は,自分が行った取引の内容もよく分かっていないことが一般的です。そのため,例えば,新興国通貨が大きく下落した後に親族の方が証券会社から送られてくる書類を見て初めて被害の実態に気付くケースが多く見られます。そして,親族の方が気付いた時点では,当時の営業担当者は転勤や退職で既にいなくなっており,実態を把握しようとしても相手にもしてもらえないといった相談をよく受けます。

その場合,証券会社から顧客勘定元帳(顧客口座元帳)を取り寄せて,まずどのような取引が行われたのかを調査します。この顧客勘定元帳は,法定帳簿なので証券会社は必ず作成しており,10年間の保存義務があります。顧客勘定元帳を取り寄せると,何時,幾らで,どのような商品の売買が行われたのかなどの情報を正確に把握することができます。

証券会社から証拠資料を取り寄せる

殆どの証券会社は,顧客との電話による会話を録音しており,また面談記録を作成しています。そこで,証券会社に対して,電話録音の開示を請求し,面談記録で当時の面談でのやりとりについて情報提供を請求します。また,証券会社は,顧客カード(顧客の属性が記載された書面)の作成・保管が義務づけられているので,その書面も収集します。証券会社が開示を拒否するようであれば,裁判所に証拠保全命令の申し立てを行います。

法的手続きを検討する

証券会社は,法律によって,顧客が被った損失について,交通事故での示談交渉のような形で賠償することができない決まりになっています。そこで,賠償請求するためには,法的手続きを検討します。法的手続きとしては,金融ADRの申し立てか民事訴訟になります。金融ADRは,金融機関が賠償に応じる姿勢を示さないと不調で終わってしまいますので,最終的には民事訴訟を提起することまで念頭において検討することになります。

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