2 違法類型

  1. 適合性原則違反
  2. 不招請勧誘の禁止、再勧誘の禁止、迷惑勧誘の禁止
  3. 断定的判断の提供等
  4. 説明義務違反
  5. 新規委託者保護義務違反
  6. 過当売買、無意味な反復売買の禁止
  7. 仕切り拒否

①適合性原則違反

商品取引員は、顧客の知識、経験、財産の状況及び契約を締結する目的に照らして、不適当と認められる勧誘を行ってはならない」とされています(商品取引所法第215条)。よって、商品先物取引の知識、経験が全くない顧客、商品先物取引の仕組み及びリスクを理解できない顧客、資産及び収入に乏しい顧客、安全指向の顧客に対する勧誘は、それだけ適合性原則違反となります。

Q 私は、これまで商品先物取引は勿論、証券取引も行ったことはありません。そのような場合、適合性原則違反となりますか。

A 証券取引の経験もないとなると、顧客の経験に照らして不適合と判断される可能性があります。ただしその他の要素も併せて判断されるので、それだけで直ちに適合性原則違反となるものではありません。

Q 私は、無職で年金暮らしの女性で、亡父が残した資産で老後の生活を送っていました。この場合、適合性原則違反となりますか。

A この場合、資金の性格や取引の理解力・判断力に照らして不適合と判断される可能性が高いと考えます。

②不招請勧誘の禁止、再勧誘の禁止、迷惑勧誘の禁止

顧客が取引の勧誘を希望しない旨の意思を表示したにもかかわらず勧誘した場合、顧客に対して迷惑を覚えさせるような態様で勧誘した場合、勧誘に先立って勧誘を受ける意思の有無を確認しないで勧誘した場合、商品先物取引所法第214条の禁止行為に該当します。

Q 突然、電話で商品先物取引の勧誘を受けた場合、禁止行為に該当しますか。

A 勧誘を受ける意思の有無を確認されないで勧誘を受けた場合、禁止行為に該当します。

Q 私は、最初に電話で勧誘を受けた際に「商品先物取引はやらない。」と答えたにもかかわらず、しばらく経って同じ業者の営業マンが勧誘してきました。この場合、禁止行為に該当しますか。

A 再勧誘の禁止に該当します。

③断定的判断の提供等

商品取引員は、顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、または確実であると誤認させるおそれのあることを告げて勧誘してはならない」(商品取引所法214条1号)

Q 私は、営業マンから「金は今底値です。来週中には間違いなく上がるので今が買い時です。」と言われて勧誘されました。これは違法行為ですか。

A 断定的判断の提供として違法行為に該当します。

④説明義務違反

商品取引員は、商品先物取引の仕組み及びリスク等の顧客の判断に影響を及ぼす事項について、顧客の知識、経験、財産の状況及び契約を締結しようとする目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度にて説明しなければならない」(商品取引所法218条)

Q 私は、商品先物取引を開始する際、営業マンから説明書を示されて説明を受けましたが、初めて聞く内容で全く理解できませんでした。それでも説明を受けているのだから説明義務違反にはならないのでしょうか。

A 説明義務を尽くしたと言えるためには、当該顧客が理解できる方法及び程度で説明が行わなければなりません。商品先物取引の仕組みは難解で、初めて説明を受けた場合、簡単に理解できるものではありません。よって説明書を示されて説明を受けたからといって説明義務違反を問えないものではありません。

⑤新規委託者保護義務違反

商品先物取引所法の解釈の指針を示した「商品先物取引の委託者の保護に関するガイドライン」(経済産業省作成)によれば、過去一定期間以上にわたり商品先物取引の経験がない者(全く経験がない者も含む)に対し、最初の取引から最低3か月を経過するまで、顧客が投資可能資金額と申告した金額の3分の1を超える取引の勧誘を行うことは不適当とされています。
新規委託者保護義務違反か否かは、前記の基準に加え、取引開始時から3か月以内の取引金額及び数量、投資可能金額を設定した経緯等に照らして判断されています。

⑥過当売買、無意味な反復売買の禁止

商品取引員が所属する日本商品先物取引協会が定める「受託等業務に関する規則」3条によれば、「商品取引員は、顧客の知識、経験、財産の状況及び契約締結の目的に照らして不相当と認められる過度な取引を行ってはならない」と規定され、具体的には建玉回数及び建玉枚数が過度とならないようにしなければなりません。
また「両建て」(同一商品の買いと売りを同時に建てること)、「日計り」(一日のうちに建てと決済を行うこと)、「直し」(既存の建玉を仕切って、同じ日に同じ建玉をすること)、「途転」(既存の建玉を仕切って、同じ日に反対の建玉をすること)といった特定売買は全体の取引に占める割合が高い場合、無意味な反復売買の禁止違反となります。
これらは、商品取引員から入手した委託勘定元帳に基づき、手数料化率(差損金に対する手数料金額の割合)、月間回転率(取引日数を分母とし、取引の行われた回数を分子とし、これに30の日数を掛けて算出した数値)を算出することにより、客観的に判断することができます。 

⑦仕切り拒否

顧客が証拠金の返還請求、手仕舞いの指示を出した場合に、商品取引員がこれに応じない行為は、禁止行為に該当します(商品取引所法施行規則103条)。
商品先物業者は、顧客が取引を終了させようと手仕舞い及び預託金の返金を要求すると、理由をつけてこれを引き延ばす、応じないといった行為がみられますが、これらは全て禁止行為です。

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