多額の金融遺産を保有したまま被相続人が突然お亡くなりになり,相続人が金融機関を信頼して相続手続きを手伝ってもらい,その後,金融機関から証券取引や保険を勧誘されて,何時の間にか多額の損失発生を被ってしまうケースが非常に多く見られます。
当法律事務所での最近の相談事例のうち8割以上は相続をきっかけに金融被害に遭われてしまったケースです。例えば,証券会社に金融遺産を預けてお亡くなりになった場合,預託資産を相続するためには相続人が証券会社に自身名義の証券口座を開設して移管を行わなければなりません。証券会社は,多額の金融資産を預けたままお亡くなりになった場合,「生前,Aさんには大変お世話になったので線香を上げさせていただきたい。」等と述べて相続人に近づいてきます。相続人は証券会社から送られてきた相続手続きの書類を見てもどうしたら良いか分からず,証券会社を頼らざるを得ません。具体的には,金融資産を相続するためには相続人であることを証明するため戸籍謄本等の書類を多数取り寄せて証券会社に提出する必要がありますが,一般の方はこのような手続きを行ったことがないので途方に暮れてしまいます。すると証券会社は,「遺産整理サービス」なる相続手続き全般をサポートするサービスの利用を提案します(これは銀行でも同じです)。この「遺産整理サービス」も手数料が200万円以上と高額なのですが(なぜこのような高額の金額になるかと言うと,金融機関は自分で戸籍謄本等の書類の取り寄せをするのではなく提携事務所に丸投げするからです),証券会社の目的はこの手数料ではなく,相続した金融資産の運用です。そのため,相続人への移管作業を終わると,他の金融商品への乗り換えを勧めてきます。
当法律事務所で実際に取り扱ったケースでも,元々相続した金融資産は国債や社債のような固い金融商品だったのですが,証券会社の人から「危ない」等と言われて,他の金融商品への乗り換えを勧められ,仕組債や投資信託に乗り換えさせられ,次第に株式取引になっていき,最終的には外国株や信用取引の回転売買で数千万円が消えてしまいました。また,銀行も預金を預かっているだけでは手数料が上がらないので,投資信託や保険といったリスク商品への投資を勧誘してきます。そして,相続人が一定程度リスク商品への投資を行うようになると,今度は系列の証券会社を紹介してきます。
一般の方々は,メガバンクのような名前の通った銀行から紹介された証券会社であれば信用しますが,顧客情報は全て銀行から証券会社に流れており(銀行はそのために情報共有同意書という書類にサインをもらいます),証券会社はどれ位であれば投資してくれるか分かった上でリスク商品を勧めてきます。また,最近は,地方銀行も生き残りをかけて系列証券会社と提携しており,銀行員が系列証券会社を紹介して仕組債を勧誘するようになっています。銀行はなぜ証券会社を紹介するかというと,紹介したお客さんが金融商品を買ってくれると紹介した銀行員にも成績(昇給やボーナスの査定)がつくからです。
当法律事務所では,相続をきっかけにそれまで証券取引にほとんど縁のなかった方が金融被害に遭われてしまうケースを非常に多く見てきました。このような多数の事例を見ていると,相続手続きや書類の取り寄せ等の作業を金融機関に任せてしまうのは非常に危険です。当法律事務所は,金融機関との交渉や相続に必要な書類の取り寄せ等の相続手続きのお手伝い,金融被害の回復等おいて多数の取り扱い実績があります。多額の金融資産を相続された方は,是非,金融機関の話を聞く前に当法律事務所にご相談下さい。
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