当事務所の弁護士本杉明義の為替デリバティブ本が発売されました(2011年9月)
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『「為替デリバティブ」リスクを回避する方法』出版のご案内
著者:本杉明義(当事務所 所長弁護士)
出版社:PHP研究所
定価:1,300円(税別)
【著者からのメッセージ】
平成23年1月末に金融庁から以下の発表がありました。「銀行から勧誘された為替デリバティブ取引で損失を抱えている中小企業が1万9000社、契約の本が4万件」。私は、金融庁が前記の発表をする約2年前から、為替デリバティブ取引で多額の損失を抱える100社以上の中小零細企業から相談を受けていました。
金融庁の前記発表では、1社当たりが抱える為替デリバティブ取引の評価損の金額が分からないため、全体像がよく見えてきません。しかしながら、私が相談を受けてきたケースでは、1社当たりが抱える評価損が少なくとも数千万円、多いと億単位、中には20~30億円という企業もありました。他方、中小企業が年間で稼ぎだせる金額(営業利益)は収支トントンの会社から1000万円前後、多くても数千万円程度です。
現在のような円高の為替水準が続く限り、どう考えても支払えないような金額です。
銀行は、前記の金融庁の発表の後から、為替デリバティブ取引の支払いに窮する中小企業に対して、支払いのための融資を積極的に勧めるようになりました。しかしながら、支払いのための融資であれば、為替デリバティブ取引の損失が負債に代わるだけで根本的な解決にならないことは明らかです。お金を借りても、デリバティブ損の支払いに消えてしまうのであれば、融資の意味がありません。
私は、このような事態を抜本的に解決するには、為替デリバティブ取引上の損失を、その中でも特にこれから損失が具体的に発生する評価損について、一定のルールに基づいて、合理的な理由がある場合に減額免除を認めるスキーム作りが急務であると考えます。
このような事を言うと、モラルハザードを招くとか、損失補填禁止の原則が骨抜きになるといった批判があるのは承知しています。しかしながら、このまま本業では黒字の中小企業が、為替デリバティブ取引の損失でどんどん倒産するのは、銀行にとっても、日本経済にとっても大きなマイナスでしょう。
最近は、この減額免除のスキームを、事実上、金融ADR(金融分野における裁判外紛争解決制度)が果たしているように感じます。そこで、本書は、一番多くを金融ADRの活用方法に割いています。現時点で、最も有効かつ簡易迅速な解決方法が金融ADRだからだと感じるからです。金融ADRの活用方法について具体的なイメージをもってもらうために、最初に、第一章の実例をお読み下さい。
ただし、この金融ADRにも難点があります。それは、金融ADRが双方当事者の合意を前提とした手続きである点です。したがって銀行が金融ADRに対して非協力的な態度を取り続けると解決できないことになります。最終的に強制力を持った解決制度が民事訴訟なので、その点についても解説しました。さらに、最近は、会社分割や第二会社方式といった私的整理、私的再生の活用も盛んになってきているので、その点にも言及しました。また支払い金額の減額免除までは認められないが、リスケジュール(債務返済を繰り延べること)であれば何とかなる場合の方法にも言及しました。
私が本書を書いた目的は、為替デリバティブ取引を巡る状況を広く世間全般に知ってもらいたいという気持ちと、何とか解決のための方策について知恵を絞っていきたいという気持ちからです。私のような未熟な者が書いた物がどの程度お役に立てるか分かりませんが、これをきっかけに関係者の議論を呼び起こし、この為替デリバティブ取引を巡る問題が良い方向に向かって解決していくことを切に望みます。
(本書「はじめに」より)