金利スワップ取引とは、想定元本に対する利息の支払いにおいて、例えば、固定金利と変動金利の支払いを交換する契約を言い、借入金の利息の支払いが変動金利の場合に固定金利化するために利用されるのが典型です。

金利スワップ取引もデリバティブ取引の一つで、中途解約すると解約清算金が発生します。この解約清算金は、市場金利と支払金利との金利差などの諸要素に基づいて算出しますが、金利差が大きいと予想外に大きな金額になることがあります

金利スワップ取引の基本的な仕組みを理解することはそれほど困難ではありませんが、どのような条件で金利スワップ取引を組めば変動金利のリスクをヘッジする効果が発生するのかは高度の知識、理解力を要します。
最近、銀行は、融資を固定金利で貸すことを嫌い、融資契約自体は変動金利で行い、融資契約と抱き合わせで金利スワップ取引を行うことがあります。その場合、融資契約と金利スワップ取引が上手くマッチしてヘッジ効果が上がれば問題ないのですが、融資が分割実行のため途中で頓挫したり、期限前返済して融資契約自体が消滅して金利スワップ契約だけが残った場合、融資契約と金利スワップ取引との間で齟齬が生じます。その場合、当然に金利スワップ取引も中途解約せざるを得なくなるのですが、予想外に解約清算金が大きいと紛争になる可能性があります

銀行は、金利スワップ取引の内容及びリスクを、顧客が理解できる程度に説明する義務を負っています。金利スワップ取引などのデリバティブ取引の知識、経験がある顧客であれば別として、金利スワップ取引などのデリバティブ取引の知識、経験が全くない素人の場合、どのような条件で金利スワップ取引を行えばヘッジ効果が上がるのか、中途解約した場合に発生する解約清算金がどのような計算に基づいてどの程度の金額になるのかを説明しなければなりません。

この点、福岡高裁平成23年4月27日判決は、ヘッジ効果が上がらない金利スワップ取引を十分な説明なく勧誘し、かつ中途解約時の解約清算金についても抽象的で具体的な説明がないことを理由として、信義則上、金利スワップ取引を無効と判断しました。前記福岡高裁判決以前は、銀行勝訴の判決が多かっただけに、今後、金利スワップ取引だけでなく、中小企業と銀行との間のデリバティブ取引を巡る紛争案件においても影響を与える判決だと考えます。