金融商品取引法は、証券市場の公正な価格形成を阻害し、投資家の信頼をなくすような不正行為を禁止しています。
具体的には、①風説の流布・偽計、②相場操縦、③インサイダー取引等が禁止されています。

これらの行為は、金融商品取引法上、刑事罰が設けられており、特に最近、インサイダー取引については証券取引等監視委員会も目を光らせており、刑事責任を問われるケースが増えています
また最近は、インターネット取引が株式取引の主流となり、投資クラブや同好会の仲間同士で意思を通じ合って、「見せ玉」による株価操作を行うケースもあり、このようなケースでもインターネット掲示板の書き込みや外部からの通報で事件が発覚することが十分にあります。
尚、2004年には、違反行為への抑止手段として、不正行為者への課徴金制度も新設されました。

市場に対する不正行為が認められた判例

(1)クレスベール証券事件(偽計)

クレスベール証券の代表取締役であった被告人が米国プリンストン債の粉飾の事実を知り、償還されない可能性が高いことを知りながら虚偽の説明を以て販売したとして、刑事責任を問われた
(東京地裁平成14・10・10判決)

(2)東天紅事件(風説の流布)

被告人が、共犯者と共謀の上で、東天紅株の公開買付を行うなどという虚偽の事実を公表し、株価をつり上げて利益を得ようとした事件で、刑事責任を問われた
(東京地裁平成14・11・8判決)
なお仕手筋等が複数の人間と共謀し、株価を高騰させて、その保有する現物株式を高値で売り抜けるために、証券会社を利用して信用取引を行い、現物株式を高値で売り抜けた後、証券会社に立替金を発生させる事件(いわゆる「鉄砲取引」)は、定期的に発生しています(例えば「OHT株事件」)。この場合、弁護士や政治家が事件に関与しているケースも少なくありません。

(3)メディア・リンクス事件(風説の流布・偽計)

被告法人が、自社の株価高騰を企図して、社債の払い込みについて虚偽の事実を公表したとして刑事責任を問われた
(最高裁平成18・2・20判決)

(4)キャッツ事件(相場操縦)

害虫駆除等を事業として営む法人の取締役等が、同社の株式売買は繁盛であると誤解させる目的を以て、仮装売買を行ったとして、刑事責任を問われた
(東京地裁平成17・2・8判決、東京高裁平成17・9・7判決)