指導助言義務とは、投資者が専門的知識不足のために、合理的な行動をとれない場合、金融商品取引業者は、適切な助言と情報提供を行う義務がある、とするものです。
助言義務が問題とされるのは、①金融商品取引を行う局面、②金融商品を購入後、損失が発生する局面の他に、近時は③一連の取引が継続的に行なわれていく過程での助言義務も問題にされています。

従来からも指導助言義務違反が認められた判決例はありましたが、最高裁平成17・7・14第一小法廷判決において、才口裁判官が補足意見において「オプションの売り取引は利益がオプション価格に限定される一方、損失が無限あるいは莫大になる危険性のある、各種証券取引の中で、最もリスクの高い取引の一つであると言うことができる。~顧客の取引内容が極端に売り取引に偏り、リスクコントロールすることができなくなるおそれが認められる場合には、証券会社がこれを改善、是正させるために積極的な指導、助言を行うなどの信義則上の義務を負うと解される」と述べてから以降、この補足意見を踏まえて証券会社の指導助言義務違反を認める判決例が目立つようになっています。

要するに、証券会社は、顧客にハイリスクな取引を勧誘し、その結果、顧客がリスクコントロールを欠いた状態を招いた場合、「売りっぱなし」のまま放置することが許されず、法的にアフターフォローのために義務を負うとの考え方です。

助言義務違反が認められた判例

(1)株式取引の経験を豊富に有する顧客であっても、信用取引の保証金維持率が30%を割っても取引を継続して損失が拡大し、その拡大は担当社員の主導によるものであったとして、保証金維持率が30%を割った以降の取引につき、証券会社の指導助言義務違反を認めた
(大阪高裁平成20・8・27判決)

(2)株式取引を巡る事案で、購入株数が過大であることを指摘して再考を促す等の指導、助言義務を負っていたにも関わらず、これを怠ったとして違法性を認めた
(大阪地裁平成21・3・4判決)

(3)株式取引を巡る事案で、自宅マンションの住宅ローンが残っていることを知りながら、株価が高騰又は急落する危険のある銘柄を提案して株式取引を継続させたことについて、損失拡大防止義務違反を認めた
(東京地裁平成21・2・23判決)