現時点で(平成23年7月)、支払い金額の減免は、金融ADRでの手続き、具体的には全銀協ないしFINMACでのあっせん手続きで行われています。金融ADRで未払い金及び解約損害金について、銀行が大幅な減額に応じたり、免除したりしたケースは決して少なくありません

あっせん手続きでの解決は、非公開の手続きで行われ、かつ内容も当事者間で守秘義務条項を入れた形になっているため、内容が公になることは少ないのですが、以下、公開できる範囲で解決事例を挙げます。

事例① 約1億2000万円の未払い金及び解約損害金全額について銀行負担

輸入はあるが円建て取引なので為替リスクはない。社長はデリバティブ取引を理解する能力がなく、かつ過去にデリバティブ取引の経験がない。銀行側が会社の実需の把握を怠り、かつ商流に見誤りがあった。

事例② 約8000万円の未払い金及び解約損害金について7割を銀行負担

輸入もあって為替リスクを負っているが、銀行から勧められた為替デリバティブ取引の金額が実需を大幅に超えていた(いわゆる「オーバーヘッジ」)。銀行は実需の把握を客観的な資料で行うことを怠った。

事例③ 解約損害金、既払い金、未払い金について銀行が2分の1を負担

仕入は国内業者から行っており、為替変動の影響を直接受けるわけではない。為替デリバティブ取引の規模が当該会社の財務内容から耐えられるかどうかの調査が不十分であった。解約損害金(約9300万円)、既払い金(約2300万円)、未払い金(約600万円)の合計金額について顧客と銀行が2分の1ずつの負担となった。

事例④ 約1億円の解約損害金及び未払い金のうち9割を銀行負担

ヨーロッパの企業からの輸入で決済通貨がユーロであるにもかかわらず、銀行が円米ドルの為替デリバティブ取引を勧めた。

事例⑤ 未払い金及び解約損害金の全額を銀行負担

フィリピンからの輸入はあるが、元々は円貨で決済し、米ドルは不要であった。銀行から円米ドルの為替デリバティブ取引を勧められて取引した。その後は為替デリバティブ取引で購入した米ドルを輸入の決済に使った。

事例⑥ 既払い損の50%を取り戻した事例

海外からの輸入はないが外国産の商品を仕入れている会社で、銀行から勧誘された為替デリバティブ取引で8000万円弱の損害を被った(取引自体は既に終了した)。あっせんの結果、銀行が前記損害の50%を返還することで解決した。

事例⑦ 外貨決済があっても55%~60%の銀行負担

海外から水産物を輸入している会社でメガバンク2行から為替デリバティブ取引を勧誘されて損害を被った。仕入価格と為替変動の相関性が不十分という理由で、A銀行については未払い金及び解約損害金の60%を免除、B銀行については未払い金及び解約損害金の55%を免除するという内容で解決した。

事例⑧ 既払い損を含めた全損害の50%以上の銀行負担

銀行から為替デリバティブ取引を勧誘された当時、外貨建ての輸入はなかったが、契約締結後には外貨建て輸入が始まったケースで、契約当時、為替リスクをヘッジする必要性が乏しかった等の理由で、会社が被った損害(実現損、未払い金、解約損害金)の50%~60%を銀行負担とし、未払い金及び解約損害金の80%強を免除する内容で解決した。

事例⑨ 7億6000万円強もの高額の支払義務が免除された例

メインバンクである銀行側が当該企業のドル建て実需の金額把握が不十分で、最大で2倍前後のオーバーヘッジとなった例で、15億円強の解約清算金等の50%を銀行負担となった。