民事裁判の後半の山場が証人尋問です。為替デリバティブ取引を巡る裁判の場合、取引に関わった人達の証人尋問が行われます。
中小企業側では取引の勧誘を受けた人(多くは社長)、銀行側は勧誘した人(多くは担当者)、商品説明をした人(担当者か専門部署の人)の尋問が行われます。証人尋問は、主尋問、反対尋問、補充尋問からなります。
主尋問は、自分の弁護士からの質問に対して答えるものであり、反対尋問は相手方の弁護士からの質問に答えるものであり、補充尋問は裁判官からの質問に答えるものです。尋問は、質問に対して端的に答えること、聞かれたことに対して答えることが基本的なルールです。
法廷に出頭して証言した経験のある人は殆どいないでしょうから、十分に訓練して臨む必要があります。リハーサルは、反対尋問の準備も含めて、2~3回は必要でしょう。
この種の事件では、顧客側と銀行側の証人の証言が180度食い違いことは珍しくありません。
よって証言の信用性は非常に重要になります。これまでの主張や陳述書と食い違っていないか、言い分に不自然な点や不合理な点はないか、記憶に曖昧な点はないか、証言内容が抽象的で説得力に欠けていないか、等といった観点から、事前のリハーサルでしっかりチェックし、改善すべき点は改善します。
反対尋問の準備は、完全に質問内容を予想することは不可能です。不必要にしゃべりすぎない、質問内容をよく理解してから答える、誘導尋問に引っ掛からないといった一般的な注意点を抑え、あとは気になる点についてどう答えるかを確認する程度でしょう。
証人尋問の実際
東京地裁の場合、証人尋問は比較的短時間で行われます。2~3人の証人でも1期日で全て行うのが原則です。
特に主尋問の時間を短くし(1人30分程度)、反対尋問中心で行われます。それに対して、地方の裁判所は比較的長目に時間を取る傾向があり、2~3回の期日に分けて証人尋問が行われることも珍しくありません。
主尋問はリハーサルをした上で臨むので、予想外の質問をされることはありませんが、それでも当日はよく質問を聞いて答える必要があります。
中には覚えた答えを吐き出すことに一生懸命になって、質問と答えがかみ合っていないことがありますので、そのようなことがないように注意して下さい。
反対尋問は予想できない質問をされることもありますが、答えに窮して黙ったり、わき道に反れた証言を長々と繰り返すと、裁判官の心証を悪くするおそれがあります。
相手方弁護士の質問が聞き取れなかった場合は「もう一度、お願いします。」と答え、質問の意味が分からなけば「質問の意味がよく分からないのですが。」と答えるべきであり、質問がよく分からないのにその場の雰囲気に押されて迎合した答えをしてはいけません。
また資料を見せられて質問された場合は、よく資料を確認してから答えて下さい。