金融ADRとは何か

ADRとは、裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)の略称で、訴訟に代わる、あっせん、調停、仲裁などの当事者の合意に基づく紛争解決制度です。

ADRは、訴訟と異なり、迅速かつ柔軟な紛争解決が可能な制度ですが、訴訟のような強硬的な拘束力はないため、話し合いが合意に達しないと紛争解決には至らない制度です。

平成21年6月の金融商品取引法改正により金融ADRに関する規定が法律に盛り込まれ、同22年10月より指定紛争解決機関が活動を開始し、本格的に金融ADRが開始されるようになりました。

当事務所では、これまでの経験から、為替デリバティブ問題の解決に対して、金融ADRの利用は最も効果的な方法の1つであると考え、力を入れております。

金融ADRは、金融機関との間の金融取引を巡る紛争を抱える顧客が、第三者機関の協力を得て、紛争を解決しようとする制度です。実際には、後でも述べますが、あっせん申し立てを行う形で行います。

全銀協とFINMAC

中小企業と銀行との間での為替デリバティブ取引に関して金融ADRを取り扱っている機関は、一般社団法人全国銀行協会(いわゆる「全銀協」)と、特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(いわゆる「FINMAC」、フィンマックと呼びます)があります。

全銀協は、銀行が会員の組織で銀行業界のための公的な活動を主として行っています。FINMACは、元々は日本証券業協会という証券会社の会員組織の内部にあった、あっせん手続きを取り扱う部署が独立して成立した組織です。いずれの組織も公的な活動のための組織で、社会的信用性のある団体です。

為替デリバティブ取引は、相手方が銀行ということで、これまでは全銀協のあっせん手続きが利用されることが多かったのですが、最近ではFINMACを利用するケースも増えてきました。

あっせん委員や相談係の人によっても対応が違うので一概には言えませんが、全銀協は為替デリバティブ取引を巡る多数の案件を見ているためポイントは心得ているが、処理の仕方が機械的形式的でやや丁寧さに欠ける、FINMACは全銀協より丁寧で時間をかけた対応をするといった印象を受けます。

なお解決の結果は、事案の内容や相手方の銀行の対応にもよるので全銀協とFINMACのどちらが顧客に有利かは一概には言えません。

当事務所では、事案に応じて、相応しい機関への申立をご提案しています。

あっせん手続きの流れ

あっせん手続きの基本的な流れを示すと以下のとおりです。