為替デリバティブ取引による被害の救済方法は、以前は金融ADRの申立てが中心でしたが、明らかに最近その流れが変ってきています。

すなわち、具体的には、金融ADRの申立て件数が減少し、民事裁判の提起が増加しています。金融ADRの申立て件数が減少している理由は以下のとおりです。

以前に比べて、あっせん案における銀行負担割合が減っている

金融ADRの初期(2010年10月~2011年)では、未払い金及び解約清算金の
全額を銀行が負担することも珍しくありませんでした。また、億単位の金額で銀行が負担することも少なからずありました。しかしながら、金融ADRにおける銀行負担割合が累積で増えるにしたがって、銀行が大きな負担を強いられることに反発するようになり、結果、あっせん案における銀行負担割合が以前に比べて大きく減少している事実があります。そのため、中には、金融ADRの申立てを行っても大した結果が得られないものと諦めてしまっているケースや銀行との関係悪化を気にして躊躇しているケースがあります。

ADRでは、本質的論点が無視される現状がある

あっせん手続が、商流を確認して、ヘッジニーズの有無で、おおよそ結果が決まってしまう、画一的かつ形式的な運用に満足できないこと金融ADRは原則1回の事情聴取期日で結果を出してしまうという手続の性格上、水掛論になりやすい論点や評価が分かれる論点は一切見ないという限界があります。
 よくあっせん委員から言われるのが「この場は事実認定の場ではない」とか「商品性に問題があるといった論点は民事裁判で議論すべき論点である」といった具合です。したがって、為替リスクをヘッジするといいながらヘッジ商品とは言えない商品構造上の問題点や契約当初の段階から億単位でマイナス時価評価で商品設計されているといった本質的論点が無視されているのが現状です。このような現状に満足できない方々が金融ADRではなく民事裁判への流れる理由となっています。

契約が既に終わっていたり、終わりに近づいている場合に救済にならない

被害企業のには、既に銀行の勧めに応じて為替デリバティブ取引を中途解約し、解約金借入金で支払ってしまっていたり、契約が終期に近づいて将来分の銀行負担では解決にならないケースが増えてきています。このようなケースでは、銀行によっては過去の損害の返還には一切応じられないとする銀行や過去の損害は負担割合を決める際に考慮しないといったスタンスの銀行との間では救済されないことになります。このような場合、必然的に民事裁判による解決を当初から検討せざるを得ません。

諸外国では顧客企業に有利な判決が出始めている

銀行と中小企業との間の店頭デリバティブ取引で、銀行全面敗訴の判決は我が国では福岡高裁平成23年4月27日判決位しか今のところありません。しかしながら、諸外国では、以下のように、銀行敗訴の判決が出始めています。

まず、ドイツ最高裁は、平成23年3月22日、中小企業と銀行とのデリバティブ取引に関して、契約時点でのマイナス時価評価を説明しなかったことを理由に無効との判断を下しています。また、韓国でも、中小企業と銀行との為替デリバティブ取引に関して、ソウル中央地裁は、平成24年8月23日、損害の6~7割について賠償するように命じる判決を下しました。他にも、インド、イタリア等で銀行が敗訴する判決が出ています。また、当事務所でも、為替デリバティブと本質的に同じ問題を抱える「仕組債」問題について、平成24年11月12日に画期的な勝訴判決を獲得いたしました。

訴訟上の和解で有利な解決が図られている

訴訟上の和解では、和解条項上、守秘義務条項が入るため、内容が口外されることはないのですが、銀行との為替デリバティブが訴訟上の和解で解決されている実例が少なくないようです。その場合の解決例については、ケースバイケースではありますが、現状の金融ADRでのあっせん案よりも有利な内容で和解している例があると思われます。銀行も、敗訴判決を下されるよりは大きく負担してでも訴訟上の和解で解決した方が良いと考えますので、場合によっては和解狙いで民事裁判を提起することも考えられます。