全銀協やFINMACでのあっせん解決事例はホームページでも閲覧できます。
銀行は、他の取引(例えば投資信託の販売や融資など)に関する紛争と比較して、為替デリバティブ取引を巡る紛争では圧倒的に譲歩した解決に応じています。
数千万円単位の減額に応じた例は多数ありますし、中には億単位の減額に応じている例もあります。また負担割合についても未払い金と解約損害金の5割以上を銀行が負担するケースも珍しくありませんし、中には未払い金と解約損害金の全額を銀行が負担するケースもあります。
なぜ銀行は金融ADRにおいてこのような大幅な譲歩に応じているのでしょうか?ここから先は私の推測になりますが、私が理由として考える点は以下のとおりです。
1 | あっせんが不調になって大量の案件が裁判に持ち込まれることを恐れている |
2 | 裁判になると公開の法廷で行われ、証拠開示の手続きや証人尋問などで 明らかにしたくない事実が明らかになってしまう |
3 | 裁判になっても勝てる見込みが薄い |
4 | 金融庁からそれなりの指導が出ている |
5 | ある程度の減額に応じても収支ではプラスを確保できる |
金融ADRにおける譲歩の態様は銀行によって温度差があります。
為替デリバティブ取引を大量に販売した銀行ほど、比較的に寛容に譲歩しているように感じます。
大量に販売しているということは、相当無理して販売したケースが少なからず含まれているでしょうし、収益も相当大きく上がったであろうと思われます。また大量の為替デリバティブ取引の案件が裁判に持ち込まれると、弁護士費用も巨額になるでしょうし、裁判の管理も大変でしょう。さらにマスコミや世間の注目を浴びることにもなるでしょう。
そのような諸々のリスクを考慮し、ある程度の譲歩であればそれに応じて金融ADRという非公開かつ曖昧な世界で処理できるのであれば、その方が良いとの政策的判断があるのではないかと思っています。