為替デリバティブ取引は本当にヘッジ目的なのか
銀行が中小企業に販売した「通貨オプション取引」「クーポンスワップ取引」は、どの銀行の提案書にも、「本取引は●●株式会社様が輸入に伴い発生する外貨建て債務の為替リスクをヘッジするためにご提案いたします」等といった文言が記載されています。
つまり銀行は、中小企業が抱える円高リスクをヘッジする目的で為替デリバティブ取引を勧誘したことになっています。
しかし、これまで100社以上の中小企業から相談を受けてきた中には、為替リスクを負っているとはとても思えない会社も数多くありました。
また中小企業が為替リスクを負っているとしても、為替デリバティブ取引は円高時のハイリスクを負担することで円安時の為替リスクをヘッジできる商品です。したがって、円安時の為替リスクが切実な会社でなければ相手として適切だとは言ない筈です。
「公序良俗違反」となるような契約も存在するのではないか
銀行が為替デリバティブを中小企業に販売して高額の手数料を得ていたことは周知の事実です。契約1本当たりで数千万円から大きなディールになると億単位の収益を上げていたと思われます。
銀行も営利企業である以上、「儲ける」ことを非難するつもりはありません。しかしながら、為替デリバティブ取引を販売した相手方の中小企業はデリバティブ取引を適切に評価する能力を全く持っていない人達ばかりです。プロから見れば、不適切に見える条件のデリバティブであっても素人にはそれはわかりません。
法律の世界では、相手方の無知の乗じて暴利を得る行為を「公序良俗違反」といって契約自体を無効としています。銀行が個別の為替デリバティブ取引で幾らの収益を上げていたのかはなかなか明らかにしませんが、明らかにすると「公序良俗違反」となるような契約も存在するのではないかと思います。