仕組債は、デリバティブを利用して商品設計した新金融商品です。しかも、我が国では、このような仕組債が私募形式で、かつ相対取引で活発に売買されています。
私募形式の場合、目論見書が存在せず、A4の紙1~2 枚の簡単な商品説明書ないし提案書で商品説明が行われていることも当たり前にあります。また、相対取引の場合、取引市場での売買と違って、公正な価格も分 かりませんし、販売金融機関と顧客は利益相反の関係に立ちます。

簡単に言うと、価値の低い商品を設計して高く売れれば、それだけ金融機関に入る収益が高くなるのです。

仕組債のように、複雑な条件を色々と付加した商品になってくると、その商品の価値が一般顧客には分かりません。金融商品の価値は、大まかに言うと、リスクとリターンの相関関係で決まりますが、仕組債のような商品になると、専門業者に依頼しないと商品の価値が分かりません。その結果、70円位の価値しかない物が100円で売られるようなことが起きるのです。取引市場で流通している商品であれば、市場の需給関係で価格が公正妥当な所に落ち着くことになりますが、取引市場が全くなく、金融機関から言い値で購入する仕組債の場合、値段に見合った商品なのかどうかが全く分からないのです。

よく金融機関側から、「エンジンの仕組みが分からなくても自動車の運転はできる」といった喩え話を持ち出して、仕組債の商品組成方法まで開示する必要はないと主張されます。確かに、商品組成上の細かな仕組までは顧客が投資判断する上で必要がないかもしれませんが、少なくとも当該仕組債の価値を知るために必要な情報は提供されてしかるべきです。なぜなら、そのような情報(例えば、対象の指標となる指数のボラティリティ、負わされる為替リスクの大きさ、ノックイン確率など)は金融機関側は保有していますが、一般顧客は知る由もなく、その結果、情報の著しい格差を利用して金融機関が暴利とも言える高額の収益を上げることが可能となってしまうからです。

そして、金融商品は所詮、幾らのお金を投資し、幾らの収益を得られるかが全てなので、リスク分析や期待収益を数値化した価格が全てといっても過言でありません。そのような分析は今や割と低価で金融専門業者が明らかにしてくれるようになっています。そして、仕組債を巡る判決例でも、そのような専門業社の鑑定評価を採用して判断する事例が増えて参りました(大阪高裁平成24年5月22日判決、東京地裁平成24年11月12日判決など)。また、諸外国では、仕組債等のデリバティブ商品における、購入時点の価値的な不均衡を理由に、販売金融機関に100%の全面的な賠償責任を命じる判決も珍しくありません(ドイツ最高裁2011年3月22日判決、シュツットガルト高裁2011年12月14日判決、ウッパータル地裁2012年1月18日判決など)。

なお、裁判官は、この種の金融工学に関する知識、理解はないので、金融工学専門業者が作成した資料をそのまま提出しても、良い結果は得られません。この点、専門性のある弁護士と金融工学の専門業者が連携して、裁判官を説得するような工夫が必要です。
当事務所では、複数の金融工学の専門業者と連携しており、利用しやすい費用で高度専門な情報や知識が得られます。そして、実際の訴訟活動において、鑑定書、意見書、裁判所における説明会の実施、専門家証人として証人尋問、相手方金融機関担当者の証人尋問における弾劾証拠の作成等を行っています。