為替デリバティブ取引も仕組債もデリバティブ取引なので、その商品内容や問題点を理解するためには金融工学の知識が不可欠です。
すなわち、オプショ ン取引やスワップ取引の基本的な概念は当然のこととして、オプションの価値をどうやって算出するのか、スワップの価値をどうやって算出するのか、為替デリ バティブ取引の時価をどうやって算出するのか、仕組債の時価をどうやって算出するのか等は、全て金融工学の知識が不可欠です。
例えば、当事務所が取り扱った法人顧客の日本最大手証券会社に対する為替デリバティブ取引に関する勝訴判決である広島地裁平成24年5月15日判決では、為替デリバティブ取引を中途解約した際に顧客が証券会社に支払った解約金について「被告の説明を前提とすると、解約金は、被告が、オプション価格に関する計算モデルを基礎に作成したプログラムを用いて算出された評価損(時価評価額)を元に算出されるというのであるから、その概要(算出根拠の詳細を説明することまでは不要であるとしても、一定のシミュレーションによる額、変動要因等)の説明は、上記の損失の見込額と相まって、投資のためのリスク判断に必要というべきである。」と判示し、結論として解約金の説明義務違反を認めています。
そして、前記の「評価損(時価評価額)」は、オプション価値の算定公式である、ブラック・ショールズ・モデルを基本とした算定公式で算出されています。
為替デリバティブ取引や仕組債は契約締結時の時価が、顧客側にとって著しく低いことは周知の事実です。そのような事実も、時価の算定方式や、フォワードレートとの比較差、日米の金利の影響等の知識が必要です。
よって担当弁護士も、前記のような金融工学の知識、理解があることを前提に、裁判においてそれを分かり易くかみ砕いて説明する必要があるのです。