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仕組債、デリバティブ取引の時効について

1 仕組債、デリバティブ取引で被った損害賠償請求権も時効(消滅時効)にかかります。時効にかかってしまうと、仮に損害賠償請求権が認められる事案でも、裁判上の請求が認められなくなります。では、時効は何年でかかり、その場合の起算点はどこからなのでしょうか。また、時効を中断するにはどうしたら良いのでしょうか。   ImgTop9.jpg
2 消滅時効には、民事上の請求権の時効、商事上の請求権の時効、不法行為を理由とした損害賠償請求権の短期消滅時効の3種類があります。民事上の請求権の時効は10年(民法167条1項)、商事上の請求権の時効は5年(商法522条)、不法行為を理由とした損害賠償請求権の短期消滅時効は3年です(民法724条)。

 

3 仕組債やデリバティブ取引で被った損害賠償請求は、一般的には不法行為を理由とします。そうすると、損害賠償請求が「損害及び加害者を知ったとき」から3年の経過を以て時効にかかります。そして、「損害及び加害者を知ったとき」とは、「賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知ったとき」と解されています(最高裁昭和48年11月16日判決)。

 

例えば、ノックイン条件付仕組債ですと、ノックインした時点では賠償請求が可能と見なされる可能性がありますので注意が必要です。また、デリバティブ取引を中途解約して損害が発生した場合、遅くとも中途解約によって損害が発生した時点から時効が進行すると思った方が良いです。前記の最高裁判決で注意すべきは、損害賠償請求が「事実上可能な時点」から時効が進行するとされている点です。すなわち、法的に損害賠償請求が行使可能であったかどうかではなく、実際に権利行使が可能であったか否かで決定するのです。

 

4 次に、債務不履行を理由とした損害賠償請求権について説明します。債務不履行と言えるためには、金融機関の行為が契約上の義務の不履行が該当する必要があります。この点、説明義務違反が契約上の義務不履行と言えるかが問題となります。最高裁平成23年4月22日判決によると、説明義務違反は不法行為には該当しても債務不履行にはならないとされています。ただ、この事案は信用協同組合の出資契約に関するものなので、金融機関の説明義務違反全般に当てはまるものではないとの見解もあります。いずれにしても、説明義務違反を理由とした損害賠償請求の場合、債務不履行構成が認められず、不法行為しか認められない可能性があります。そうすると、前記のとおり、損害賠償請求が事実上可能な時点から3年の経過を以て、時効にかかってしまいます。なお、債務不履行構成に立った場合、民事上の請求権として10年なのか、商事上の請求権として5年なのかについても議論があります。仕組債取引やデリバティブ取引の一方当事者である金融機関は、商法上の「商人」に該当するので一般的には商事時効にかかると思われていますが、説明義務違反のような信義則上の付随義務違反の場合は商事時効に該当せず、民事上の時効が適用されて10年であるとの判決例もあります(大阪高裁平成12年5月11日判決)。

 

5 次に、時効が進行している場合に中断する方法を説明します。まず、時効が完成する前に裁判外であっても損害賠償請求を行えば時効は中断します(民法147条1号)。ただし、裁判外の請求は「催告」と言って、6か月以内に裁判上の請求(訴訟提起)をしないと結局は時効が完成してしまいます。裁判外の請求は、後で争いにならないために、一般には内容証明郵便で請求します。さらに、時効完成前に、金融ADRの申立てを行えば、金融ADRの終了通知を受けてから1か月以内に訴訟提起を行うことで、金融ADRの申立時に訴えの提起があったものとされて時効中断が認められます(銀行法、金融商品取引法)。

 

6 以上によれば、最も早く時効が完成する場合として、損害が発生してから3年で完成してしまいます。よってリーマンショックを契機とした円高株安を原因とする仕組債、デリバティブ取引の損失はそろそろ時効完成を意識せざるを得ない時期が来ていますので、注意が必要です。
 

 

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