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デリバティブの注目判決ソウル地裁2008・12・30 KIKO決定文詳細

2008・12・30ソウル地方裁判所仮処分決定の原文及び反訳文が入手できましたので、その詳細を説明します。

事案

 申立人Aは事務機器類の製造、販売及び輸出を業とする上場法人であり、申立人Bは電子機器類の製造、販売及び輸出を業とする上場法人であり、相手方は銀行である。
 申立人等は、輸出取引に伴う為替リスクをヘッジする目的で為替先物予約を行っていたが、 銀行側からの勧誘を受けて、申立人Aは2006・5から合計14回、申立人Bは2007・6から 合計9回、通貨オプション取引(以下「KIKO」という)を行った。
 「KIKO」とは、企業が為替リスクを回避するため銀行からプットオプションを買い入れ、銀行にオプション料を支払う代わりにコールオプションを売り渡し(契約金額は主に2倍)、結局は ゼロコストを実現した通貨オプションである。
 契約期間は1年ないし3年間で主に1か月単位で期限が到来するオプションの束で構成されている。
 なお前述が基本形であるが、変形もある。
 ウオン/ドルの為替レートは 2007・6から2008・3までは900ウオンから940ウオンで変動していたが、2008・3から上昇し始め、2008・11には1500ウオン台を記録し、現在は1200ウオンから1400ウオン台で変動している。
 申立人等はウオン/ドルレートの急騰により、銀行に売り渡したコールオプションの行使により、 申立人Aは20億8208万ウオン(1ウオン0・08円で計算すると1億6656万円)、申立人Bは273億3940万ウオン(1ウオン0・08円で計算すると21億8715万円)の損失を被った。

裁判所の判断

 裁判所は、契約内容どおりの拘束力をもって申立人等が義務を継続して履行することが信義則に顕著に反している場合、契約の解約権を認め、本件の場合、以下の理由から契約の解約権を認めた。
  まず銀行は場外派生金融商品に対する危険感受能力が低い取引相手方に 場外派生金融商品の取引を勧誘する場合、取引相手方の営業属性、財務状況、金融取引水準、 当該取引の目的、商品に対する理解程度、危機管理能力、商品の種類等に注目し、その取引の 相手方に適合しないと認定される取引を勧誘してはならず(いわゆる適合性の原則)、ひいては 当該取引の構造、取引に伴った危険及び潜在的損失に影響を及ぼす重要な要因等、取引の 重要事項を取引の相手方が理解できるように十分に説明し告知しなければならない義務がある (いわゆる説明義務)。
 しかるに銀行は、この契約に申立人等が過度な危険に陥らないかを点検し、この契約の内容が申立人等に適合しないと認定された場合、このような契約の締結を勧誘せず、 もしくは契約の内容を申立人等に適合するように変更するなどして契約の締結を 勧誘しなければならないところ、銀行はこの義務を怠った(適合性原則違反)。
 また銀行は、単純に一般的、抽象的に危険を告知するだけでは足りず、最悪の場合を明確に 詳細に説明し、この事態に関して充分な理解を得た後に取引をするかを確認しなければならない ところ、銀行は本件契約が内包する危険を単に一般的、抽象的に告知しただけで為替レートが 急騰した場合に申立人等がどのような状況に陥るかについて明確に充分な説明をしなかった (説明義務違反)  

当職の見解

 韓国と日本の法制度の違いや本件が仮処分決定であることを差し引いても、ソウル地方裁判所が、銀行による通貨オプション取引による被害について、適合性原則及び 説明義務について踏み込んだ判断を示し、かつプロ投資家であり、かつ為替リスクヘッジの 必要がある上場会社が顧客の本事案において、適合性原則違反及び説明義務違反を認めた点で、我が国における同種事件のおいても大変参考になる事件だと考えます。




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