デリバティブ損害で顧客側の請求を全面的に是認(福岡高裁H23・4・27判決)
福岡高裁で中小企業と大手銀行との間におけるデリバティブ契約(金利スワップ契約)に関する紛争で注目すべき判決が2件ありました。2件とも同じ裁判体によるものでほぼ同じなので、うち1件について私の見解を述べさせていただきます。
この事件の内容は以下のとおりです。顧客である中小企業が銀行から勧められて変動金利と固定金利を交換する金利スワップ契約を締結したところ、固定金利と変動金利の差額金が毎月発生したので、従前の説明内容と異なることを理由に契約途中から履行を停止しました。そして顧客側から銀行に対して、過去の損害金の賠償請求と、未払い金及び中途解約金の支払い義務がないことの確認を求めて訴訟を提起したところ、銀行側からも未払い金等の支払いを求めて反訴が提起されたという事件です。原審は、ほぼ銀行側の言い分を認めて顧客側の請求の殆どを棄却したのですが、福岡高裁は顧客側の言い分を認めて、顧客側の請求をほぼ全面的に認める内容に変更したものです。
福岡高裁は、原審判決を覆して顧客側の言い分を認めた理由として、以下の重要な指摘をしています。
「金利スワップ契約は専門的性質の契約であるところ、契約の一方当事者である顧客側には専門的知識が乏しかったことは明らかであるから、銀行側はこれを売り込む際にはそれ相応の説明義務を果たす必要があった。ところが、銀行側は、金利スワップ契約締結の是非を判断するために必要な重要な要素、例えば中途解約するとどの程度の清算金を必要とするのか、変動金利リスクをヘッジするにはどの程度の金利水準等であれば良いのか、といった点について十分に説明しなかった。その結果、実際には変動金利リスクヘッジとしての効果が上がらなかった。銀行側の説明義務違反は重大なので、本件金利スワップ契約は無効であり、かつ不法行為を構成する。」
この判決が今後の同種事件(為替デリバティブ取引を巡る裁判を含む)にどのような影響を与えるかはまだ分かりません。しかしながら、相手方顧客企業の為替リスクをヘッジするとの目的で勧誘した商品が為替リスクのヘッジ効果が上がらなかった場合、中途解約した場合の解約損害金の説明が抽象的で解約した方が良いのか否かの判断が適切にできなかった場合には、前記の判決の理屈によると重大な説明義務違反となり、契約の無効あるいは不法行為の成立を認める事情になるのではないかと考えます。